オフクロ

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那覇市 街路樹

 オフクロは小さな薬屋をやっていたが、朝早くから夜遅くまで働きながら私のこともよく面倒見てくれた。だが、残念なことにそれ以外の良い思い出がない。

 両親はいわゆる夫唱婦随であり、家庭のいろんな判断、決定をすべてオヤジが行い、オフクロは黙って従うのみだった。私はオフクロがオヤジにきちんと自分の意見を言うのを聞いたことがない。

 私に対しても同じだった。物心がつくと、私はよくオフクロに話し掛けたが、いつも自分の考えがないつまらない答えしか返って来なかった。私は、それが残念でたまらなかった。でも、そのことをオフクロに言えなかった。そして話をしなくなった。オフクロの中では、たぶん私をかわいがったのに、最後は私に裏切られた気持ちだったと思う。それは事実であり、私が悪いのだ。

 ただ、私とオフクロは絆が弱かった。それは、私がオフクロの話はつまらないと思ったことから始まっており、もし私がオフクロに自分の気持ちをぶつけたら、オフクロはショックを受けるだろうが人生が変っていたかもしれない。そして私らの関係も、もう少し良いものになっていたと思う。原因は、私がオフクロと同じように自分の意見を言わなかったことにある。家族との関係は重大で、人生を左右してしまう。

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